【2025年版】基礎控除・配偶者控除・特定親族特別控除・所得金額調整控除の書き方

   

最終更新日: 2025-10-25

シリーズ記事: 第1回|扶養控除等(異動)申告書(マル扶)の書き方 第3回|保険料控除等申告書(近日公開)

お急ぎの方へ:
まずは下の「この記事のポイント」「提出前チェックリスト」だけでOK。
5分で「基礎控除・配偶者控除・特定親族特別控除・所得金額調整控除(=通称“基配書”)」の重要箇所を確認できます。

本記事は、年末調整で提出する「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」(以下、基配書)の書き方を、実務目線で迷わず進められるよう整理しました。
判断基準日(12/31)、「収入」と「所得」の違い年齢・所得による控除額の考え方を中心に、提出前に便利な早見表・チェックリスト・FAQ付きで解説します。

監修: 社会保険労務士法人 総合経営サービス(東京都北区)

この記事のポイント(要約)

  • 12月31日基準で判定:年末時点の事実で判断。途中の増減で判定しない。
  • 金額は「所得」で記入:給与は給与所得控除後、年金は公的年金等控除後の金額を用いる。
  • 配偶者控除は“世帯主所得×配偶者所得”で決まる:双方の所得帯で控除額が変動。
  • 特定親族特別控除:おおむね19歳以上23歳未満で、年収123万円を超える大学生等に関する控除(2025年新設欄)。
  • 所得金額調整控除:給与収入850万円超かつ一定要件(特別障害者・23歳未満の扶養等)で申告可能。
① 基礎控除(基) ・本人の合計所得金額で判定 ・付属の判定表で該当帯にチェック→額を転記 ② 配偶者控除/配偶者特別控除(配) ・世帯主所得帯 × 配偶者所得帯 の交点で金額 ・適用欄で「控除」か「特別控除」かを確認 ③ 特定親族特別控除(特) ・19〜22歳で年収123万円超の大学生等 ・給与所得控除後の“所得”帯で段階的に決定 ④ 所得金額調整控除(所) ・給与収入850万円超+一定要件で申告可 ・(収入−850万円)×10%(上限あり) ※ 金額の最終確定は各申告書の「判定表・記載要領」に従ってください。
図1:基配書(基・配・特・所)の配置イメージ。実際の様式は会社配布の原票をご確認ください。

目次

  1. 「基配書」とは?提出する目的
  2. 判断の大原則(12/31基準・収入/所得・年齢区分)
  3. 書き方の流れ(4ブロック別:基・配・特・所)
  4. 控除の考え方・早見メモ(実務者向け)
  5. 初心者がやりがちな4つの落とし穴
  6. 記入箇所クイックガイド
  7. 動画で具体的に確認(第2回)
  8. ケース別シミュレーション(代表例)
  9. よくある質問(FAQ)

1. 「基配書」とは?提出する目的

「基配書」は、本人の基礎控除・配偶者控除(特別控除含む)・特定親族特別控除・所得金額調整控除をまとめて会社へ申告する書類です。
年末調整で用いられますが、本来は毎月の源泉所得税の基礎情報としても重要です。

2. 判断の大原則(12/31基準・収入/所得・年齢区分)

  • 12/31基準:年末時点の事実で判断(所得・年齢・扶養状況)。
  • “収入”ではなく“所得”で記入:給与=給与所得控除後、年金=公的年金等控除後
  • 年齢区分:特定扶養・23歳未満など、年齢は12/31時点で判定。

3. 書き方の流れ(4ブロック別:基・配・特・所)

3-1. 基礎控除(基)

本人の所得に応じて基礎控除額が決まります。
実務のポイントは、該当する所得帯を正しく判定し、控除額を欄に転記すること。判定表が付属している場合は、その表に従います。

3-2. 配偶者控除・配偶者特別控除(配)

  • 配偶者の金額は所得(給与所得控除後)で見積。
  • 世帯主の所得帯 × 配偶者の所得帯の交差で控除額が決まります(判定表の交点)。
  • 控除欄は「配偶者控除」か「配偶者特別控除」かを適用欄で識別して記入。

例:世帯主の所得区分A、配偶者の所得区分「3」に該当 ⇒ 交点の金額を配偶者特別控除欄へ。

3-3. 特定親族特別控除(特)

2025年に新設された申告欄です。
おおむね19歳以上23歳未満で、年収123万円を超える大学生等を念頭にした控除で、給与所得控除後の“所得”帯で控除額が段階的に決まります。
年収が一定額(例:150万円付近など)を超えると控除額が減少し、ある上限(例:188万円付近など)まで緩やかに逓減します。該当者がいる場合は必ずこの欄を使用してください。

3-4. 所得金額調整控除(所)

  • 給与収入が850万円超で、かつ次のいずれかに該当:
    ① 本人・配偶者・扶養親族のいずれかが特別障害者/② 23歳未満の扶養親族がいる など。
  • 金額は(給与収入 − 850万円)の10%を目安に計算(上限あり)。
  • 複数条件を満たしても、重複加算は不可(1回のみ)

4. 控除の考え方・早見メモ(実務者向け)

控除判定の要点メモ(2025年提出時の実務向け)
ブロック 見るべき指標 実務の勘所
基礎控除(基) 本人の合計所得金額 「収入」ではなく“所得”で判定。付属表の該当帯にチェック→額を転記。
配偶者(配) 世帯主所得帯 × 配偶者所得 交点の金額を控除欄へ。配偶者控除配偶者特別控除の区別を適用欄で必ず確認。
特定親族(特) 年齢:19〜22歳/年収123万円超 給与所得控除後の所得帯で金額が段階変動。該当者がいればこの欄が必須
所得調整(所) 給与収入850万円超+要件 計算式は概ね(収入−850万円)×10%(上限あり)。重複加算なしに注意。

5. 初心者がやりがちな4つの落とし穴

  1. 収入と所得の混同:給与は給与所得控除後、年金は公的年金等控除後所得で記入。
  2. 年齢の判定ミス:特定扶養・23歳未満など、12/31時点で区分。
  3. 新設欄の未申告:年収123万円超の大学生等は特定親族特別控除欄へ。
  4. 所得金額調整控除の重複:条件が複数あっても1回のみ。上限にも注意。

6. 記入箇所クイックガイド

  • ①基礎控除:本人の合計所得金額を判定表で帯確認→該当額を転記。
  • ②配偶者:「世帯主の所得帯 × 配偶者の所得帯」の交点金額。
    適用欄で「配偶者控除」か「配偶者特別控除」かを必ず確認。
  • ③特定親族:(大学生など)19〜22歳かつ年収123万円超。
    所得帯で段階的に控除額が決まるため、この欄は記入漏れに注意
  • ④所得調整:給与収入850万円超+一定要件で可。
    (収入−850万円)×10%(上限あり)。重複加算は不可。

7. 動画で具体的に確認(第2回)

この記事は要点を短時間で把握するためのものです。
実際の記入位置や分岐の見方は、下の動画で書類の実画面と共にご確認ください。

8. ケース別シミュレーション(代表例)

代表3ケースの考え方(最終判定は配布の判定表に従う)
ケース 前提 見る欄 実務の勘所
配偶者パート収入あり 世帯主:所得区分A/配偶者:年収140万円(給与所得控除後の所得で判定) ② 配偶者特別控除 「世帯主所得帯 × 配偶者所得帯」の交点金額を特別控除欄へ。
※ 年収ではなく“所得”を使う。
大学生の子が年収123万円を超える 子:19〜22歳・年収160万円例(給与所得控除後の“所得”で帯判定) ③ 特定親族特別控除 新設欄。所得帯に応じ控除額が段階変動。
※ 123万円を超えたら本欄の記載が必須。
年収850万円超+23歳未満の扶養 本人:給与収入1000万円/23歳未満の子あり ④ 所得金額調整控除 (収入−850万円)×10%を目安。
※ 条件複数でも申告は1回、上限あり。

注:ここでの金額・区分は考え方を示すサンプルです。実際の控除額は会社配布の判定表・記載要領で必ずご確認ください。

第1回の解説はこちら: 【2025年版】扶養控除等(異動)申告書(マル扶)の書き方

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 配偶者の金額は年収で書いても良いですか?

A. いいえ。給与所得控除後の「所得」で記入してください。年収(額面)のまま書くと控除額判定を誤ります。

Q2. 大学生の子が年収123万円を少し超えました。どの欄に書きますか?

A. 特定親族特別控除の欄を使用します。所得帯に応じて控除額が段階的に決まります。

Q3. 所得金額調整控除は、特別障害者と23歳未満扶養の両方がいても二重に使えますか?

A. いいえ。申告は1回のみで、重複加算はできません(上限額にも注意)。

Q4. 途中で所得見積もりが変わったらどうすべき?

A. 年末時点の実績で清算されますが、見積更新で源泉税の過不足を抑えられます。会社の指示に従い速やかに修正提出を。


監修者より

「基配書」は4つの控除を1枚で申告するため、記載ミスが連鎖しやすい書類です。12/31基準・所得で判定・新設欄の有無だけでも押さえておけば、実務の精度は大きく上がります。

私たちはこうした複雑な年末調整手続きそのものを効率化するため、10人未満の中小企業から1,000人規模の中堅企業まで、数多くの企業様へWEB年末調整システムの導入支援を行ってまいりました。

個別の申告内容で迷う場合はもちろん、会社全体の業務効率化にご関心をお持ちの場合も、ぜひ私たち専門家へご相談ください。個別事情で迷う場合は、私たち専門家へご相談ください。

年末調整の効率化に関する個別のご相談はこちら

 



社会保険労務士法人 総合経営サービス 肥後労務管理事務所:https://sokei-sr.jp/

【王子オフィス】
〒114-0002
東京都北区王子2-12-10 総経ビル

【吉祥寺オフィス】
〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-4-14 メディ・コープビル8 501号室

【信州松本オフィス】
〒390-0833
長野県松本市双葉 11-12

PAGE TOP