【令和7年度最新】企業型DCも対象!キャリアアップ助成金「賞与・退職金制度導入コース」の活用要件を社労士が解説

   

こんにちは。

毎週水曜日は、私たち専門家チームが、企業の「人」と「お金」にまつわる助成金の最新情報をお届けしています。

人材確保が難しい今、パートタイマーや契約社員の福利厚生を充実させたいと考える経営者様が増えています。
その中で「パートさんにも退職金を用意したいが、将来の資金繰りが不安」「企業型DC(企業型確定拠出年金)は対象になるのか?」というご相談をよくいただきます。

結論から申し上げますと、企業型DCの導入も、要件を満たせば助成金の対象になります。

今回は、令和7年度(2025年度)も継続して利用できる「キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)」について、特に「企業型DC」を活用する場合のポイントや正確な要件を解説します。

1. 正確に知ろう!「キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)」とは

まず、制度の正確な名称と概要を押さえましょう。
この助成金は、就業規則や労働協約を変更し、すべての有期雇用労働者等に関して、「賞与」または「退職金」制度を新たに設け、支給または積立てを実施した場合に助成されるものです。

支給額(中小企業の場合)

導入する制度の内容によって、以下の金額が支給されます(1事業所あたり1回のみ)。

導入する制度 助成額
賞与 または 退職金 制度
(いずれか一方を導入)
40万円
賞与 および 退職金 制度
(両方を同時に導入)
56万8,000円

※大企業の場合は額が異なります。

2. 「企業型DC」も対象! 退職金制度として認められるための要件

この助成金における「退職金」の定義は厳密に定められています。現金での積み立て(中退共など)だけでなく、「年金払いによるもの(企業型DCなど)」も対象に含まれます。

ただし、単に導入すれば良いわけではなく、以下の要件をすべて満たす必要があります。

要件①:費用は「全額事業主負担」であること

これが最も重要なポイントです。本助成金の対象となる退職金制度は、「積立金や掛金等の費用を全額事業主が負担すること」が就業規則等に規定されており、実際に負担する必要があります。
企業型DCの場合、従業員が給与から拠出する(マッチング拠出)部分などは助成金の対象となる積立額にはカウントされず、あくまで会社が拠出する掛金で要件を満たす必要があります。

要件②:積立額は「月額3,000円以上」

対象労働者1人につき、以下の積立額が必要です。

●月額積立(企業型DCなど)の場合:1ヶ月分相当として3,000円以上を、6ヶ月分以上積み立てること。

つまり、パート社員1人あたり月々3,000円以上の掛金を会社が負担し、企業型DCに積み立てれば、この要件をクリアできます。

要件③:長期雇用を前提とした制度であること

いわゆる「前払い退職金」のように給与に上乗せして払う形式ではなく、退職時や年金受給時まで積み立てる制度である必要があります。

3. 賞与(ボーナス)制度の要件も確認

退職金(企業型DC)とセットで導入して、受給額アップ(56万8,000円)を狙う場合、「賞与」の要件も満たす必要があります。

●支給額:対象労働者1人につき、6ヶ月分相当として50,000円以上支給すること。

●注意点:「原則不支給」などの規定はNGです。また、寸志程度の金額では認められません。

4. 申請に向けたステップと注意点

企業型DCを活用してこの助成金を申請する場合、一般的な退職金規定とは異なる準備が必要です。

Step 1. 就業規則(退職金規程)の改定

就業規則や退職金規程に、「企業型確定拠出年金制度を導入する」旨と、「掛金は全額事業主が負担する」ことを明記し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

Step 2. 全ての有期雇用労働者への適用

このコースは「一部の希望者だけ」への導入は認められません。雇用するすべての有期雇用労働者等に制度を適用させる必要があります。

Step 3. 6ヶ月以上の運用実績

制度導入後、実際に6ヶ月分の掛金を積み立て(または賞与を支給し)、その後6ヶ月間雇用を継続した実績が必要です。

5. 専門家からのアドバイス

企業型DCは、会社にとっては「損金算入できる」「社会保険料の対象外になる場合がある」などのメリットがあり、従業員にとっても「税制優遇を受けながら老後資金を作れる」というメリットがあります。

これを「キャリアアップ助成金」と組み合わせることで、導入初年度のコスト(掛金や手数料)を助成金でカバーできる可能性が高まります。

ただし、企業型DCの導入手続きには時間がかかり、就業規則の記載内容も複雑になりがちです。「自社のパート全員に導入した場合のコスト試算」や「就業規則の規定案」については、ぜひ専門家にご相談ください。

執筆者

白井 章稔(しらい あきとし)
社会保険労務士法人総合経営サービス肥後労務管理事務所
社会保険労務士・代表社員



社会保険労務士法人 総合経営サービス 肥後労務管理事務所:https://sokei-sr.jp/

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