【令和8年度】助成金はどう変わる?最新の概算要求から読み解く3つのトレンドと注目のおすすめ助成金
こんにちは。社会保険労務士の白井です。
毎年夏から秋にかけて、各省庁から財務省へ提出される「予算概算要求」が公表されます。これは、「来年度、私たちはこういう政策にお金を使いたい」という政府の意思表示のようなものです。
今回は、先日厚生労働省から公表された「令和8年度(2026年度)予算概算要求」の資料を詳しく読み解き、来年度の助成金がどのような方向に向かうのか、経営者の皆様がいま押さえておくべき「傾向」「注意点」「おすすめ助成金」について解説します。
※本記事は概算要求段階の情報に基づいています。国会での審議を経て確定するため、内容は変更される可能性があります。
令和8年度助成金の3大トレンド:キーワードは「賃上げ・人への投資・人手不足」
令和8年度の厚生労働省の予算要求全体を見ると、昨今の物価高や労働力不足を背景に、以下の3つの柱が鮮明になっています。
- 物価上昇を上回る賃上げの実現
- 三位一体の労働市場改革(リ・スキリング、ジョブ型、労働移動)
- 深刻化する人手不足への対応と多様な人材の活躍
これらを実現するために、既存の助成金の拡充や、新しい要件の追加が予定されています。特に中小企業にとっては、「生産性向上」と「賃上げ」がセットになった支援が手厚くなる見込みです [cite: 6, 19]。
ここが狙い目!令和8年度のおすすめ助成金ピックアップ
膨大な資料の中から、特に中小企業の皆様に活用をおすすめしたい助成金をピックアップしてご紹介します。
1. 人材開発支援助成金:待望の「設備投資助成」が新設予定!
今回の概算要求で最も注目すべき変更点の一つが、人材開発支援助成金です。これまでは「訓練にかかる経費と賃金」の助成がメインでしたが、令和8年度からは、訓練の効果を生産性向上につなげるための「設備投資」も助成対象になる見込みです。
| 変更予定のポイント | 内容 |
|---|---|
| 設備投資助成の新設 | 訓練修了後、そのスキルを活用して生産性向上を図るための機器・設備等の購入費用を助成(購入費用の50%、最大150万円など) |
| 中高年齢者実習型訓練(仮称) | 45歳以上を対象としたOFF-JT(座学)とOJT(実習)を組み合わせた訓練に対する助成の新設 |
「人を育てて、新しい機械を入れる」。この両輪を支援してくれる制度になれば、非常に使い勝手が良くなると予想されます。要求額も全体で約539億円と、前年度と同水準の規模が確保されています
2. キャリアアップ助成金:「106万円の壁」対応と正社員化の強化
非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を支援するキャリアアップ助成金は、引き続き助成金の主役です。要求額は約1,022億円と非常に大きな予算が組まれています。
特に、「年収の壁(106万円の壁)」対策として注目されている「社会保険適用時処遇改善コース」などは、引き続き重要な施策となります。また、正社員化コースについても、多様な正社員(勤務地限定など)への転換支援などが盛り込まれており、使いやすさの向上が期待されます。
3. 業務改善助成金:最低賃金引上げへの対応
最低賃金の引上げに伴い、事業場内の最低賃金を引き上げ、設備投資を行う事業主を支援する業務改善助成金も拡充が予定されています。特に、最低賃金の改定日前日までの一定時期については、地域の実情に応じた特例措置を講じることが要望されています。
物価高騰の影響を受けている事業者様にとって、賃上げ原資の確保と生産性向上を同時に叶える重要なツールとなります。
令和8年度に向けた注意点と準備
魅力的な助成金が並んでいますが、申請にあたっては以下の点に注意が必要です。
1. 「生産性向上」と「賃上げ」が必須要件に
どの助成金も、単にお金がもらえるわけではありません。「教育訓練を行って生産性を上げる」「設備を入れて賃金を上げる」といった、具体的な成果や計画がより厳しく求められる傾向にあります。経営計画と連動させた申請準備が必要です。
2. デジタル化・DXへの対応
厚生労働省は医療・介護分野だけでなく、行政手続き全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。助成金の申請も電子申請が基本となりつつあります。まだGビズIDを取得していない事業主様は、早めの取得をおすすめします。
3. 予算成立までのスケジュール
今回ご紹介したのは「概算要求」です。今後、年末に向けて財務省との折衝が行われ、年明けの国会で予算案が成立して初めて正式決定となります。詳細な要件や支給額は、令和8年4月以降に発表されるパンフレット等で必ず確認してください。
まとめ:早めの情報収集が成功の鍵
令和8年度の助成金は、「人への投資」と「設備への投資」をセットで考える企業にとって、非常に強力な追い風となりそうです。特に人材開発支援助成金の「設備投資助成」は要注目です。
助成金は「知っているか知らないか」だけでなく、「準備ができているか」で受給の可否が決まります。来年度の計画を立てる際は、ぜひ助成金の活用も視野に入れてみてください。
当事務所では、最新の助成金情報の提供から申請代行まで、トータルでサポートしております。自社で使える助成金があるか知りたい方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 令和8年度から新設される予定の「設備投資助成」とはどのようなものですか?
A1. 人材開発支援助成金の中に新設が要望されている制度です。従業員に訓練を受けさせ、そのスキルを活用して生産性向上を図るための機器や設備等を購入した場合に、その費用の一部(購入費用の50%など)を助成するものです。中小企業が対象となる見込みです。
Q2. キャリアアップ助成金は令和8年度も継続されますか?
A2. はい、継続される見込みです。概算要求では約1,022億円の予算が計上されており、特に非正規雇用労働者の正社員化や、社会保険適用に伴う処遇改善(年収の壁対策)への支援が引き続き重視されています。
Q3. 賃上げに関する助成金にはどのようなものがありますか?
A3. 主に「業務改善助成金」と「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コースなど)」があります。業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を引き上げ、設備投資を行った場合に助成されます。令和8年度も最低賃金引上げへの対応支援として予算が要求されています。
執筆者:社会保険労務士法人総合経営サービス肥後労務管理事務所
社会保険労務士 代表社員 白井 章稔
社会保険労務士法人 総合経営サービス 肥後労務管理事務所:https://sokei-sr.jp/
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