問合せ急増中!最大360万円が受給できる「特定求職者雇用開発助成金」の活用ポイント

   

昨今の人手不足を背景に、採用に関する助成金への注目が高まっています。
特に、私の事務所でも最近問い合わせが急増しているのが「特定求職者雇用開発助成金」です。

この助成金は、高齢者や障害者など、就職が困難な方を雇い入れる事業主を支援する制度ですが、対象者の属性や従事する業務によって複数のコースに分かれており、条件によっては最大360万円もの受給が可能になります。

今回は、基本となるコースから、いま注目の高額コースまで、制度の全体像と活用ポイントを分かりやすく解説します。

1. そもそも「特定求職者雇用開発助成金」とは?

この助成金は、就職支援が必要な方を、ハローワークや民間の職業紹介事業者などの紹介によって「継続して雇用する労働者」として雇い入れる事業主に対して支給されるものです。
対象者の属性(年齢、障害の有無、経歴など)に合わせて、主に以下の3つのコースがよく活用されています。

2. 状況に合わせて選べる主要3コース

① 基本となる「特定就職困難者コース」

最もスタンダードなコースです。高齢者や障害者、母子家庭の母などを雇い入れた場合に支給されます。

■対象:60歳以上の高年齢者、母子家庭の母など
助成額(中小企業):60万円(短時間労働者は40万円)

■対象:身体・知的障害者
助成額(中小企業):120万円(短時間労働者は80万円)

■対象:重度障害者、精神障害者など
助成額(中小企業):240万円(短時間労働者は80万円)

 

② いま注目の「成長分野等人材確保・育成コース」

最近問い合わせが増えているのがこのコースです。
就職困難者を「デジタル分野」「グリーン分野(脱炭素など)」の業務に就かせ、人材育成や職場定着に取り組む場合、上記の通常コースの約1.5倍の額が支給されます。

■対象業務例:プログラマー、ウェブデザイナー、電気自動車の生産技術者、ZEH住宅の現場監督など

助成額例:重度障害者等を雇用した場合、最大360万円

通常、未経験者(または経験の浅い方)を採用し、育成していくことが要件となりますが、DX化やグリーン化を進める企業にとっては、金額・人材確保の両面で非常にメリットの大きい制度です。

 

③ 35歳以上を支援「中高年層安定雇用支援コース」

いわゆる「就職氷河期世代」など、安定した就労の機会に恵まれなかった方を支援するコースです。

■対象:35歳以上60歳未満の方で、過去5年間に正規雇用の期間が1年以下等、不安定な就労状況の方

助成額(中小企業):60万円

このコースは、対象者が最初から「正規雇用労働者(期間の定めのない契約)」として採用されることが必須条件となります。

 

3. ここに注意!全コース共通の「鉄の掟」

どのコースを利用する場合でも、以下のルールは絶対です。これを知らずに不支給になるケースが後を絶ちませんので、必ず確認してください。

① 「ハローワーク等の紹介」が必須

もっとも重要な要件です。求人サイトからの直接応募や、知人の紹介で採用した場合は対象外です。
必ず、ハローワークや認定を受けた職業紹介事業者の「紹介状」を発行してもらった上で面接・採用を行ってください。

② 紹介前に「採用」を決めてはいけない

ハローワーク等の紹介を受ける前に、すでに選考を開始していたり、内定を出していたりした場合は対象外となります。
「いい人がいたから先に話をつけたあとで、形式的にハローワークを通す」というやり方は認められません。

③ 申請期限は厳守

助成金は、半年ごとの「支給対象期」が終わった翌日から2か月以内に申請する必要があります。
この期限を1日でも過ぎると、どんな理由があっても受給できません。スケジュール管理は徹底しましょう。

 

4. 制度の緩和情報(訓練・実習について)

最後に、一つ知っておくと役立つ情報です。
以前は、雇い入れ前の3年間にその会社で実習や訓練を受けていた人は対象外でした。
しかし、現在は生活困窮者自立支援法や生活保護法に基づく公的な就労支援としての訓練であれば、期間に関わらず新たに助成対象となるよう要件が緩和されています。福祉施設等と連携して採用を進める企業様にとっては朗報と言えるでしょう。

 

まとめ

特定求職者雇用開発助成金は、採用難の時代において、企業と求職者の双方にメリットをもたらす強力な制度です。
「特定就職困難者コース」で堅実に支援を受けるか、「成長分野コース」でDX化と共に大きな助成を目指すか、あるいは「氷河期世代コース」で意欲ある人材を発掘するか。企業の戦略に合わせて活用可能です。

ただし、手順を間違えると1円ももらえなくなる厳格な制度でもあります。「この採用は対象になるかな?」と思われたら、求人を出す前にぜひお近くの専門家にご相談ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 求人サイトで直接応募が来た人を、後からハローワーク経由で紹介してもらう形にすれば助成金の対象になりますか?
A1. いいえ、対象になりません。この助成金はハローワーク等の職業紹介により雇い入れることが絶対条件です。直接応募があった後に、形式的にハローワークの紹介を受けても「職業紹介」とは認められず、不支給となります。
Q2. 「成長分野」の業務とは、具体的にどのような業種が対象ですか?
A2. 業種ではなく、対象労働者が従事する「業務内容」で判断されます。例えば、デジタル分野であればプログラマーやウェブデザイナー、グリーン分野であれば環境保全技術者やZEH住宅の施工管理などが該当します。
Q3. 試用期間がある場合、助成金はもらえないのでしょうか?
A3. 試用期間があっても対象になります。ただし、最初の支給申請時にまだ試用期間中である場合や、試用期間と本採用で雇用契約が分かれている場合は対象外となるため、契約内容には注意が必要です。

執筆者:
社会保険労務士法人総合経営サービス肥後労務管理事務所
社会保険労務士 代表社員 白井 章稔

 



社会保険労務士法人 総合経営サービス 肥後労務管理事務所:https://sokei-sr.jp/

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